銀行が評価する融資5原則をふまえた資金調達書類作成のポイント

銀行が評価する融資5原則をふまえた資金調達書類作成のポイント

銀行が融資を行ううえでの原理原則であり、銀行が融資をすべきかどうかを判断する上で考慮するべき基本原則としてあげられる5原則に公共性、安全性、収益性、流動性、成長性、が上げられます。

銀行員は基本的にはこの原則を念頭において、支店内で協議を行うなどの融資業務に当たっています。

以下に融資の5原則に沿った書類作成のポイントを記載いたしました。

<公共性の原則>

公共性は銀行が融資取引を進めていくうえで、審査に取り上げるべきかの大事なポイントです。

銀行の自己資本比率を総資本の10%前後を平均と考えると、資金のほとんどを他人資本、つまり預金者からの預金でまかなっており、その預金者からの預金で融資を行っていることから、まず第1貸し出す先はどういうヒト、企業なのかの公共性を考えるところから始まります。

健全な社会の発展に役立つもので、世間から非難を浴びるような融資先への融資はさけなければいけません。金融機関は業務そのものが日本経済や地域経済に大きな影響を与えます。

ですので、単に利益追求だけでなく、公共的な立場から資金の円滑な供給を行い、社会や地域の発展に貢献しなければならない役割を担っています。

そして、社会的ニーズに合致したものであることが必要で、反社会的業種や回収が不確実な先への融資は慎まなければなりません。

これらのことを踏まえて、自社は何のために存在するのか、自社が扱っている商品やサービスが世の中の何に役に立っているのかなどをしっかりアピールする必要があります。

公共性は融資の5原則で一番最初にくる原則であり、自社の公共性がアピールできると銀行の新規開拓もスムーズにいきますし、融資の審査において前向きに考えてくれる可能性が高くなります。

自社の経営理念や行動指針にもつながる企業経営の土台にもつながりますので、創業当時の想いも思い出しながらしっかり考えてみましょう。

<安全性の原則>

銀行は預金者から預かった預金を融資先に運用しているため、預金者保護という観点から融資したお金は確実に回収しなければいけません。安全性とは貸し出した資金が回収できる安全度のことを言います。

銀行は融資の可否を協議、審査するうえで、融資先としてきちんと返済できるかの返済能力、きちんと最後まで返済していく意思があるかどうかを見極める必要があります。

そして、万が一返済できなくなった時のことも考えて、不動産や有価証券などの担保や保証人などの人的な保証、保証協会などの保証といった保全をしっかりさせることで、融資先が万が一倒産してしまった時でも、融資金の回収に問題が無いようにすることも大切です。

また、融資先の倒産などの危機に備え、特定の企業や特定の業種に融資が偏らないようにすることも、貸出金の安全性を高めることになります。

 「安全性」の原則は5原則の中でも最も重要なものであると言われています。たとえ残り4つが全て満たされていたとしても、貸し出した資金の回収の安全性に懸念があるのであれば融資を行うべきではないと金融機関行は考えるのです。

ですので、金融機関はハイリスク・ハイリターンのような融資よりも、堅実に事業を行っている安定した企業を好みます。

借りたお金をどうやって返済するのか、なぜ返済できるのかの根拠を説明できるようにしておきましょう。

<収益性の原則>

業務の内容から公共性が強い銀行ではありますが、株主への配当や利益の還元など銀行自身も利益を追求していかなければいけません。

利益をあげるためには、貸出利率を高くするか、貸出量を増やす必要があります。

企業の信用力、担保、保証など総合的に判断し、貸倒リスクに伴う適正な危険負担を割り出し、貸出金利に反映させることが銀行の収益のためにも必要となります。

銀行からの格付けによって、自社の評価や格付けが低い場合は、資金調達のために多少は高い金利でも条件をのまなければならないかもしれません。

金融機関は公共性が高い組織ということが前提にありますが、経営を維持していくためには適正な利益の確保が必要となるのです。

金融機関が収益を増加させれば経営も安定し、融資先の倒産が起こっても預金者に与える影響を最大限少なくすることにもなりますので、積極的に企業向け融資をしやすくなります。

上記が前提にありますが、融資先が返済していけるかどうかを判断するひとつの指針として融資先がきちんと収益をあげているか、今後も収益をあげていけるかが融資可否のポイントになりますので現在どうやって収益を上げているのか、なぜ収益が上がるのかを確認しておきましょう。

<流動性の原則>

融資の期間は、預金の期間に見合った期間に設定するべきであると言うものです。

銀行預金はお客さまから申し出があればすぐに返済する必要がある普通預金や、1年から2年ぐらいの期間が短い定期預金が大部分を占めています。

預金者にすぐに返済する預金とのバランスを考えると、融資期間は長期よりも短期のほうがいいということになります。融資先そのものの5年先、10年先までを判断するより1年未満の期間であれば、融資先の動向を予想しやすいのは言うまでもありません。

長期での融資で難色を示すようであれば、短期での申し込みをするのも一つの方法でしょう。つまり、預金の大半が短期資金であることから、返済の安全性を検討するうえでも運用(融資)も短期のほうが望ましいということ、また、流動性の高い融資のほうが回収面からも安全性が高いとうことです。

多少の預金流出などで直ちに金融機関の資金繰りが悪化することはあまりありませんが、金融機関の経営にとっては融資と預金の期間は合わせるべきだということです。

また、この流動性に関しては、保全(担保や保証など)面にも言えます。つまり、万が一融資先が貸し倒れてしまった場合、すぐに換金できる保全が求められます。

ですので定期預金などを担保にとればすぐに換金して融資金の返済に充当できますし、保証協会も金融機関へ代弁してくれますので、流動性の高い保全と言えるでしょう。

<成長性の原則>

融資先が衰退企業ばかりでは、金融機関の成長もありません。

融資した資金が融資先の成長・発展に役立ち、さらには銀行自身の成長・発展にも役立つものでなければなりません。

融資を受けることによって自社の発展・成長をできるだけ具体的に説明できるといいでしょう。

融資した資金によって融資先の成長・発展に役立ち、それによって金融機関自身の成長・発展に役立つものでなければなりません。

金融機関は預金と融資が基本業務ですので、融資先とともに成長、拡大していくことが重要であります。

それは融資先企業の成長に大きく左右されますので、成長性のある企業を見極め育成・支援していくことが大切です。

ですのでさきほど述べた通り、企業としては、融資を受けることで自社が今後どのようにどれだけ成長していくのかを具体的に説明できることが必要です。

さらには企業の成長が金融機関の成長とをリンクできる文章が書けるといいでしょう。

現在のデフレ下で、成長という観点でそれほど事業の業績がさほど良くない場合は、その状況をどのように打開していくのかの具体的行動計画などを記載し、今後の成長性が期待できる材料を見つけてぜひ融資交渉の際に自社の成長性を訴えてみましょう。

金融検査マニュアル廃止に伴い、事業性評価で判断されるようになったのはまさにこの成長性を訴えられるかもカギとなるでしょう。

今後、金融機関から融資の支援を受けていく際には、

この5つ(公共性、安全性、収益性、流動性、成長性)の原則があるということを知っていただき、それに沿った融資であれば資金調達もしやすくなります。

むしろ、この5原則に沿わない資料を一生懸命作成しても、金融機関から思うような回答をいただけないこともあります。

まずはこの5原則に従って自社のことを振り返っていただき金融機関に提出する資料を作成してみてください。